2009年3月4日水曜日

間接税的なWeb

ごく身近な人が、なんとかしてWebのコンテンツを本や雑誌を読むように楽しめないものかと盛んに言うんです。それができないから、結局、なんか Web はつまんなくて本ばっかり読んじゃうんだよなーなんていって。

僕自身はふだん本は本、Web は Web、それぞれにいいところがあって、本か Web かなんていって一方が他方をまるっきり代替しちゃうなんてことはなく、本と Web でなんてすてきな組み合わせ、Web の話題に乗って本を手にとったり、本で読んだことを Web でフォローできたりで ( Web がなければこんなにいろんな人の書評やら感想文やらを読める世界なんて訪れなかったでしょう)、まったくよくできた相互補完だよねなんて思ってるくらいですから、そのごく身近な人の感嘆に共感はできなかったんですが、でも、あんまりしつこく言いつのるもんで、ではひとつ無理にでも関心を持って、そのいわんとするところの理解に努めてみようと、ちょっと考えてみたんですね。

で、まあ、いろいろあるんですが面倒なので一言でまとめちゃうと、ようするに、いっつもいっつも、検索したり、新着リストを追ったり、あるいは、その続き、ではなく、こっちもオススメなんてのに飛ばされて、いってもいっても、出てくるのは断片的な情報ばかり、そういうのがもうやりきれない、ってことなんですね。

いやいや、なにいってやがる、そこらあたりが Web のよかったところでしょってかんじですけれども、でもそうやって彼のやりきれない心を勝手に想像してみていたら、ふと、そういや自分もそんな気分になっているときがあるな、なんて思い当たっちゃいました。

いや、電車の中で暇つぶしにケータイのブラウザを開いているときとか。そういうときって、なんか探したり、新しいの見つけたりじゃなくて、雑誌でも読むみたいに、ちゃんと並べられたものを、次へ、次へで読んでいきたいなあ、なんて。それで青空文庫にいってみたりするんだけど、何読もうか探しているうちにもう着いちゃったりしてね。

ここのところ、ずーっとちびちび読んでるゴールダイレクテッドデザインの本、 「About Face 3」 に「間接税的作業」という言葉が出てきます。ゴールにダイレクトに向かうタスクではないんだけど、ゴールを目指すための地ならしとして、半ば義務的にやらざるをえないタスクのことです。そういうのはプログラマともよく相談してなるべく取り除いていきましょう、ってことなんですけど。たとえば今これ w-zero3 のメーラーで書いてるんですけども、ときにキータッチを誤ってみんな消しちゃうことがあるんですよね。だからときどき書くのを中断しては、まめに下書き保存するようにしてます。これはあきらかに間接税的作業ですね。

で、つまり、そのごく身近な人とか、電車に乗って暇を持て余してぼーっとしている僕なんかにとっては、検索性、更新可能性、膨大な相互参照ネットワークといったWebのいいところが、みんな間接税的な作業の発生源みたいに見えちゃってるんじゃないかと。同じ作業が、ペルソナやシナリオによっては、間接税的な作業になったりならなかったりっていうのはあって、この本に挙げられている例でいえば、中上級者にも強制される初心者向けウィザードなんてのがそれですね。

そういう観点にたってみて思い出されるのが、昔、はてなにあった Rimo ってサービスですね。YouTubeにアップされている動画からめぼしいのをピックアップして垂れ流しにしてくれるやつ。いくつかチャンネルがあって、こっちはチャンネルを合わせてぼーっと眺めていればいいって。

あれ、だめだったみたいですけど、たぶん、PCの前でハンターになってる人には合わなかっただけじゃないでしょうか。電車の中とか、見たいものを探す行為がなんだか間接税的な作業に思えてくるようなシーンに向けてだったら、もうちょいグッとくるかんじがしてくるかもしれませんよ。だから、Rimo 的なものが受け入れられる環境は、むしろ、これから整っていくんじゃないかな、なんて思います。

あと、最近始まったはてなブックマークニュースも、Rimo に近いものを感じますが、あれも思い切ってケータイ向けにしてですね、ケータイ変換のどさくさに紛れて共通のページネーションを挿入して、取り上げるブックマークをぜんぶ数珠つなぎにしちゃって、で、次へ、次へで見せてくれたらいいのにな、なんて思います。合間合間に、エディター側のコメントやら独自に取材した情報なんかを挟んでね。それで、ニュースというよりも、1テーマごと、もっとたっぷりのボリュームにして、なんかブルータスとか、そういうワンイシューマガジンをぱらぱら読んでいるようなかんじになるといいなあ、とか。無理ですかね。

いや、そうなってくると、僕の身近な人が読みたい Web っていうのに、少しは近づけるのかも知れないな、なんて思ったんですけどね。

そういえば、もう 10 年以上前に、Fresheye に達人のブックマークっていうのがあったな。

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