2009年7月2日木曜日

レッツ・ビジュアル言語スタディ!

About Face 3 読書ノートの16。

ユーザーの質的調査の結果をペルソナにまとめて、一体何を把握するかって、いろいろありますが一番大事なのはユーザーのゴールですね。なんといっても、ゴールダイレクテッドデザインっていうくらいですから。

About Face 3 いわく、ユーザーのゴールには次の3種類があるんですね。ごくごくシンプルにまとめますと、こんなかんじです。


その1。エクスペリエンスゴール。

ユーザはそれを使うときにどんな感じを求めているのか?

その2。エンドゴール。

ユーザーはそれを使って何をしたいのか?

その3。ライフゴール。

ユーザーはそれを使ってどんな人になりたいと思っているのか?


ペルソナを作って、それから、ペルソナと「それ」の関わり方をシナリオとして描いていく上では、これら3つのゴールのうち、エンドゴールに注意を払うことが多いと思います。

どんなコンテキストでどんなエンドゴールのために「それ」は使われるのか?ってことをはっきりさせるためのものがシナリオですからね。

ライフゴールも、シナリオとは無縁ではない、っていうか、ペルソナのコンテキストがそもそもライフゴールに大きく影響されているはずですよね。ひょっとしたら挫折形態かも知れないけれども。

でも、エクスペリエンスゴールは、おそらく、あんまりシナリオに絡んできません。いや、書いてもいいと思うんですけどね。

「おびただしい数の大小さまざまなコントロールが整然と居並ぶ例の編集画面が PC のモニターに映し出された。ビビアンはゆっくりと呼吸を整える。そして夜のしじまに独り佇んでいるかのような、一種独特な静謐さ --- これがいわゆる静かな闘志ってやつ? ---- が心に広がるのを感じた。」

なんて。でも、ここからは、機能要件もデータ要件も出てこないですね。

ただし、ビジュアルデザイン、ルック(見た目) & フィール(使い心地)にはダイレクトに響いてきますよね。

About Face 3 は、ビジュアルデザインの一番最初のところでは、これから作ろうと思うインタラクションデザインから離れて、ペルソナのエクスペリエンスゴールだけを見据えて、そこに直接刺さるルック&フィールを探れ、っていってます。

それが、ビジュアル言語スタディ。言語ですよ。言語。ビジュアルにも語彙とかシンタックスがあるんだという考えですね。(この考えは、デザインニング・インターフェースなんかにも通じますよね。)

たとえば、全体の色調とか、質感とか、サイズ感とか。

あるいは、フォント、ケイ、リストや表組みやグラフの表現、ボタンやセレクトボックスなどフォームのコントロールのスタイルのあり方とか。

そういうのが、どういうタイプの「ビジュアル言語」で描かれるべきか、インタラクションデザインから離れて、スタディ(研究、あるいは、習作?)してみよう、と、こういうわけです。

たしかにね。

インタラクションデザインとビジュアルデザインを一体のものとして見て検討していると、インタラクションの細かい設計に気をとられて、いやあ、そんなのわかりづらいよー!とか言ってるうちに、いつの間にかルック&フィールがおざなりになってしまう傾向はあるかも知れないですね。

つまり、3つのゴールのうちのエクスペリエンスゴールが可哀相なことになっている状態。

About Face 3 は、そういうところをけっして見逃しませんね。そういうのをいちいち告発しては、ごっちゃにしないでいったん分けて考えてみろと、ビシっと言ってくれます。

ほかにも、ビジュアル言語スタディが前提にしなければならないこととしては、

・ユーザーの特性 (高齢者向けには文字を大きく、とか)
・利用状況、利用環境(長時間集中して利用するのでコントラストを抑えた配色に、とか)
・先行して定められているブランドガイドラインなど

なんてのがあります。

そうして、ビジュアル言語、すなわち、ビジュアルデザインのガイドラインを別に作っちゃうんですね。で、キーパスシナリオが出来たら、そのガイドラインに従って、実際の画面を構成していくと。

あと、このアプローチがいいのは、インタラクションデザインとビジュアルデザインは、プロセスとしてリニアにつながっている必要は必ずしもないってところですね。

エクスペリエンスゴールの見極めが出来ていれば、ということは、プロジェクト全体の非常に早い段階から、ビジュアルデザインのプロセスは動かせるってこと。

実はこれ、ぼく、やったことあるんですよね。たんに、くそスケジュールを乗り切るための工夫としてだったんですけどね。それがビジュアル言語スタディだなんて、ご利益のある仕業だなんてちっとも知らずに。

これからは胸を張って、ビジュアル言語スタディをやろう、と言おう。

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