2008年9月26日金曜日

ロゴの解剖

Web サイトのサイト ID なんていって、ロゴデザインを何案もつくったりしますね。やってるうちに何がいいんだかだんだんわからなくなってきたりして。そういうとき、なかば切れ気味にいったいロゴってなんなんだって改めて問いただしてみたくなります。

ロゴはサイトの隅に書きつける一種の署名みたいなもんで、機能的にみても、たとえば手書きのサインなんかと似ているところがあるね、なんて考えてみたことがあります。

それは、とりあえずこの世で唯一無二のものとしてあって、他とあきらかに区別できなくちゃいけない。そして、何度でも同じように書けて、そのどれもが書いた当人ただ一人を指し示すものでなくちゃならない。さらに、なんとなくではあるけど、書いた人の人柄なり雰囲気なりを表現していたりもする。

固有性と再現性と表象性ってかんじでしょうか。ロゴもそれらを備えて成立していると考えてよさそうですよね。

でも当然まったく同じというわけではなくて。まず再現性はね、ロゴの場合は技術的に当然のものとしてあるんで、あえて特性としてあげるまでもないですね。それは置いといて、ロゴとサインではその主な用途、というか目的が異なりますね。いってみれば、サインは証明、ロゴは認知。だから、サインでは可読性は二の次だったりしますけど、ロゴではそれがけっこう一大事ですよね。

それから、ロゴには再認性っていうのも問われます。サインとちがって、はじめてみた人になるべく強い印象を与えたいし、再び見た人には、ああアレね、とすぐに再認してもらいたい。つまり人々の記憶に残りたい、という。

一部の有名人のサインには、再認性のかたまりみたいなのがあったりしますけどね。ぼくが子供の頃の王選手のサインとか。あれは今でも目に浮かびますよ。

それはともかく。

ロゴの固有性と表象性の追求は、そのまま、再認性の追求の手段になったりしますね。

固有性と表象性そのものの追求だけならば、サインのように地味な見栄えでも構わないはずなんだけど、強い再認性の獲得にむけて、それらがエスカレートしていきますね。

たとえば、固有性や表象性を高めるために、こんなことをするはずです。

まず、ふつうに流通しているのじゃなくて、オリジナルのタイポグラフィーや飾り文字を使おうとするでしょ。

それでも弱いってなって、次に模様やイラストをあしらいはじめる。あしらい方のやり口は大別して次の3種類じゃないですか。文字とは独立した要素として入れる、文字の飾りのバリエーションとして入れる、文字の背景として入れる。あるいは、それらを組み合わせる。

そうしていろいろ凝っているうちに可読性が損なわれちゃったりするんですよね。これが。なんていうか、表音性を失う、みたいなかんじ。一見して頭の中にその名前の音がしてこない。じゃあ、そのぶん、表意性が増しているかというとそうでもなかったり。へんな渦まきがあって、意味なんて説明されないとわからないようなこじつけしかなくて。

そんなふうに、ロゴの再認性と可読性はトレードオフの関係にあって、ロゴのデザインの失敗は再認性が弱いか、可読性が悪いかのどっちかだったりしますね。

この再認性と可読性のバランスをどうとるか、あるいは、固有性と表象性にしてもどっちをより優先して考えるか、そのへんは、ロゴばっかり睨んでいても決められなくて、ロゴの使い道や、すでに獲得している認知の度合い、競合の存在の仕方とか、そういうコンテクストもちゃんと踏まえて考える必要がありますね。

たとえば、コンビニの看板というかネオンサイン?あれも一種のロゴと考えると、あれは遠目にもそれとわかる配色パターンによる再認性こそが第一で、店名の可読性なんてもうどうでもいいんじゃないかと思ったりしますけどね。でも、WebサイトのサイトIDじゃそうはいかない。

なんて、あたりまえのことをわざと理屈っぽくいってるだけのようですけど、こういうわかりきったことでもあえて愚直に分析してみて、析出された各要素にラベルをつけてですね、いつでもそれと名指せるようにしておくことは、ロゴデザインに限らず、この仕事では結構大事だと思うんですよね。少なくとも熱くなって失敗しそうなときにブレーキをかけたり、頭を冷やしたりするのに役立ちます。おいおい、再認性のことばっかり考え過ぎじゃないか、とかね。

それから、そうして機能分解をやってみると、これらの機能をなにもロゴという局所に押し込むこともないんじゃないかなんてことに思いが至ったりしますね。

Webサイトの場合、検索結果だとかのリスティングの中で固有性、表象性、再認性を発揮しなければいけないわけでしょ。そうするとロゴという意匠よりも、サイト名のネーミングやURLで勝負しなければいけないのかも。商標登録でいうと、「標準文字」による登録ですね。それに、アンカー文字列をクリックして訪れたサイト上の各ページでは、サイト名の伝達の優先順位なんてもうそんなに高くないわけです。すると、固有性、表象性、再認性は、サイトのトーン&マナー全体で実現すべきではないか、とかね。

あ、そう考えると、むしろコンビニのネオンサインに近くなっちゃうのかも。
-----------------
sent from W-ZERO3

0 件のコメント: