2010年7月2日金曜日

iPhone で Web ページを電子書籍風にビューするブックマークレット

Webページ上でテキストを縦組みにする nehan と、Webページから本文らしきテキストを高精度で抽出できる extract-content-javascript という素晴らしい Javascriptモジュールに立て続けに出会ったので、これらを組み合わせて、iPhone で Web ページを電子書籍風にビューするブックマークレット NehanTouch ってのを作ってみました。

こういうページを、



うまくいけば、こんなかんじで読むことができます。



(中には、HTMLの構造上、どうしても本文が抽出できないページもあります。そんな場合のために、目下、姉妹ブックマークレット NehanPaste というのを準備中です。どういうものになるかは、名前から推して測るべしってかんじですね。)

ぼくも iPhone をはじめて手にしたとき、まず最初に、ああ、これならいろいろ読めそうだ、と思ったクチですが、今みんなが騒いでる、いわゆる「電子書籍」っていうやつよりは、むしろ、Webで公開されている長文テキストが読みたかったのです。

たとえば、37 signals の Getting Real とかね。

こんな素敵なテキストがパブリックに転がってるところがWebの凄味のひとつだと思うんですが、しかしこういうの、どうも PC では読む気がしなかったんですよね。

江戸時代の学者じゃないんだから、書見台に向かうような姿勢を強制されての読書なんてカンベンしてほしい。

でも、iPhoneで、あの解像度で、あのフォントで、あのインターフェースでならいけるだろう。電車のドアのところにだらしなくもたれたり、家ででーんとひっくり返ったりしながらでも、普通に読めるんじゃないか、と。

でもね、やっぱり Webブラウザで長文は読みにくかったです。なんでかっていうと、いまさら言うまでもないことですが、スクロールですよね。問題は。

スクロールはリストを上から舐めて、行きつ戻りつしながら、目的の何かを見つけ出すためには結構使えるインターフェースだと思いますが、一連の文章をじわじわ読み進めるのには、たぶん向いてない。

だって、巻物もそうだと思いますけど、オートスクロールのように一定の速度で流していくような読み方は、ふつうできないわけで。

どうしたって、だいたい一度で読める範囲ごとに少し動かしては止めて、で、読み進めて、まただいたいでガサっと動かして止めて、っていうことになる。

すると、毎度毎度、手で適当にスクロールした量と速度に合わせて、次の読み始めの位置まで視線をさっと動かさなきゃいけない。いつも決まった場所というわけにはいかない、ブレブレの反復動作。

これ、心理学方面では、目と手の協応動作とかっていうんですけど、結構な負荷なわけです。実は相当な集中力を要します。

その負荷の大きさをあらためて思い知ったのは、iPhoneを手に入れたばかりの興奮も覚めやらぬとあるラーメン店でのことでした。ああ、おれの目と手は全然協応しない! ラーメン食いながらだと特に!って。

長文のテキストを読み進める場合は、内容に集中してフロー状態に入りたいわけですけど、目と手の協応動作の負荷が大きすぎて、いちいち干渉してくるわけです。

そこへいくと、青空文庫ビューアはどれもスグレモノでした。いわゆる「ページめくり」で、ほんとにスラスラ読めるんですよね、ラーメンすすりながらでも。

「ページめくり」というのは、要するに、ページ(表示領域)単位のスクロールです。これを最小のユーザーアクション(たとえば、ページの決まった位置を軽くタップ)で行えるようにして、だからつまり、インターフェースの透明度を最大化してですね、電子的なテキストメディアに没入できるようにする ... Web上のコンテンツにも、ものによってはそうしたビューの方法を適用できるようにすると、デバイスの進化/多様化と相俟って、Webの可能性はさらに広がり、いよいよ凄味を増していくんじゃないの?

というとこらへんをめぐって、本来、「電子書籍」は夢見られるべきなんじゃないの?

なんて思いも込めながら作ってみたんですが、出来上がりに対して、思いのほうがちょっと生意気すぎましたね。