2009年2月19日木曜日

SNSはプロレス団体ではない

SNSは専門化していく、ってなんかよく聞きますけれども、すでにネットワーク外部性で他に勝っているコミュニティ系サービスの内部に、あるジャンルに特化した先鋭的なコミュニティがぽこぽこ生まれていくってのは当たり前のようにあっても、専門SNSのようなものがいっときのプロレス団体みたいに乱立していくってのは、あんまりありそうもないと思うんですよね。

ただ、なにかキラーなアプリとかソリューションがあって、その存在意義や価値にコミュニケーションを誘発する特性が備わっていたりすると、周囲にユーザーコミュニティが形成されていくことはあるでしょうね。iKnowとか、それこそニコニコ動画とか。

でも、人生において、そういう質的に特異なコミュニケーションが欲求されることなんてそうざらにあるもんじゃないわけで。あったらそれはたしかに燃えますよ、だから、万難を排してそれだけのコミュニティに参加もしよう。しかし、たいていは、もっとゆるい、同好の者同士のおしゃべりで満たされるようなコミュニケーションでよくて、いや、それがよくて、それで十分楽しいし、役にも立つ。そういうゆるいところに、へんなコミュニケーション強化ツールなんて提供されても意味がわからない。

で、そういう強化が必要なければ、あるいは、とおりいっぺんのコミュニケーション機能がふつうに提供されているだけでよければ、コミュニティ系サービスの価値はネットワーク外部性のみに左右されることになるんで、細分化よりもむしろ大きいところがより大きくなっていく、がトレンドになるんじゃないかな。

というわけで、はじめひとつの大きな大陸があって、それがだんだんばらけていくようなイメージとか、そういう全体的な傾向として専門化への流れがある、なんていえないと思います。流れは反対で、ただ、その流れとは無関係に、なんらかのソリューションと一体になった、特異な、島みたいなコミュニティが生まれることはありえる、って感じでしょ。

それから、so-net がやってるような誰でも主催できるSNSって、プライベート志向のやつ、ちょっとおもしろそうですけど、これも専門化うんぬんとはまた違いますよね。方向性として似ているように見えても、そもそも知っている者同士の了解ありきで始めて、その先の広がりにもほとんど期待はないとすると、ネットワーク外部性が介在する余地がない。

まあ、その、こんな情勢判断なんてやっても仕方ないような気もするんですが、ただ、あっけらかんと大きくは専門化の流れ、なんていって、そのおおざっぱな認識を根拠にして、とにかく専門化してればなんでもOKみたいな企画をたてちゃうとか、そういうのは厳に慎みたいなと思いまして、ちょっと書いてみて自分の頭を整理、ということで。おそまつ。


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2009年2月11日水曜日

とっさのインタビューカード

About Face3 読書ノートの5。

なにしろ、まずは、質的なユーザー調査、ユーザーインタビューありきってわけなんですけども、実際問題、なかなか、そういうのをちゃんと計画して組織的に実施できる予算も空気もなかったりします。

だからってふてくされてても仕方なくて。そういう場合は、予算を握っている方々にそうした活動の意義と価値を一日も早く理解していただけるよう精力的に説得しつつですね、一方で、ユーザーインタビューなんてのは、もっとゲリラなかんじでやってカバーできる部分も案外多いかも、なんて、頭を切り替えてみるのも手なんじゃないかなって思いました。

だってね、職場の同僚とか、取引先の人とか、一緒に飲んでる人とか、いろんな人と話しているうちに、彼らのうちの誰かが、今デザインしようとしているプロダクトのユーザー候補だったことに気づくってのは、そんなにありえないことじゃないでしょう。

そういうとき、とっさにインタビューできるようにいつも準備しておくってのはこれ、実によい心がけじゃあないでしょうか。

About Face 3 によれば、ユーザーインタビューで、ユーザーから引き出したい情報は次のとおりだそうです。

引用します。

・製品(新製品をデザインしている場合は、類似システム)がユーザーの生活やワークフローに関わってくるコンテキスト。いつ、どのように、どんな理由で製品を使うのか。

・ユーザーの視点から見たドメインについての知識。ユーザーは、仕事をするために何を知っていなければならないのか。

・現在の作業と仕事全体。現在の製品が必要とされる仕事とサポートしていないことの両方。

・製品を使うにあたってのゴールとモチベーション。

・脳内モデル:ユーザーが自分の作業や仕事全般についてどう思っているか、製品に対してどのような期待を抱いているか。

・現在の製品(新製品をデザインしている場合は、類似システム)が抱える問題点、製品に対する不満。

引用終わります。

はい。以上のくだりを頭に入れておいて、で、これを一種のテンプレートにしてですね、後は相手と話題に身を委ねながら臨機応変に質問を繰り出せるようにしておけばいいわけです。

ただ、ちょっとこれだとサッと取り出しにくそうですね。なんで、自分のために自分で勝手にまとめてみました。質問の骨子は5枚のカード、ということにしておいて、このイメージを覚えておくっていうのはどうかなと。



ちなみに、インタビューイーには、ユーザー以外にも、クライアント(製品の購入者)、ステークホルダー(プロジェクト関係者)、SME(Subject Matter Experts = 対象ドメインにおける"その道のプロ")がいて、それぞれに聞くべきことがあるのですが、でも、ユーザーインタビューに比べれば単純です。

クライアントとステークホルダーから聞き出すべきことは、それぞれの立場でのビジネスとは何か?ということになります。ゴールだけでなく、各種の制約や条件も含めてね。

一方、その道のプロは、デザイナー自身が対象ドメインを学ぶ上での先生役といっていいんでしょう。

なんで、インタビューイーの種別のイメージとユーザーインタビュー用の5枚のカードを頭に入れておけば、たいていなんとかなるんじゃなかな。と、思うんですけどね。これ、どうでしょうね。

2009年2月4日水曜日

ゴールダイレクテッドX

About Face3 読書ノートの4。

ペルソナっていうと、つい、ユーザーの心の中を覗く、みたいなイメージをどっかで持ってしまって、そんなアテにならない話を、なんていう人もいるわけですけど、要するに、インタラクションデザインの確度を上げるための事前準備として、これからデザインするものが実際にどう使われるのか、そのパターンを洗い出しておきたいということですね。

ただ、使われ方のパターンを調べるっていっても、いきなり実現すべきユースケースにはどんなものがありますかって、誰かに聞きに行ってもダメなんで。だいたい、実現すべきユースケースをいいかんじに揃えていくことからしてデザインの仕事なわけですから。

そこで、これからデザインするものを魔法の製品Xとしておいてですね。いったんその中のことはブラックボックスにしておく。
で、その製品を使う人の動機や目的、人と製品をとりまくさまざまな状況や環境を明らかにしていこうじゃないかと。ペルソナとゴールとコンテクストですね。
それらがある程度わかっちゃえば、そこにずっぽりとハマるXとは一体何なのか?というはっきりとしたスタート地点に立って、デザインの検討をはじめることができるという寸法。

なんだかわけのわからないモヤモヤとはすっぱり縁を切って、すがすがしい風に吹かれてデザインしようよ。それがゴールダイレクテッド。

図にするとこんなかんじだと思います。



「民族誌学的インタビューが最優先事項としているのはユーザーのなぜ(ロールの異なる個人の行動を動機づけているものは何か、究極的にそのゴールをどのようにして達成したいと思っているのか)を理解することであり、ユーザーが実行している作業は何かを知ることではない」
っていうわけですね。

この本には、「民族誌学的インタビュー」と称したユーザーインタビューのしかたや、その結果を元にしたペスソナ/シナリオ法によるモデリングのしかたなんかがいろいろ丁寧に解説されているわけですけど、はじめっからあんまり気張らず、まずはこの絵のイメージで X 以外の事項を明らかにすることに集中して、ヒアリングなりモデリングなりをやってみるのがいいかな、と、思いました。

この段階でのアンチパターンは、Xだけがやけにはっきり見えちゃって、その周辺がいつまでたってもぼんやりしていることなんでしょうね。
その経験はくさるほどあります。