2008年9月19日金曜日

ネットのニッチ

昔からよく言われることで、メディアは成熟していくにつれ専門化していくってのがありますね。たとえば、雑誌なんてすごくて、専門外のふつうの人には思いもよらないようなタイトルの専門誌がいっぱいある。たとえば山とトンネルとかってね。数千部はければペイするような規模で、失礼ですけど名前聞いただけで思わず笑っちゃうようなのが。

それで、インターネットなら、そういう傾向はさらにエスカレートするだろう、っていうか、そうできるだろうって。だって、雑誌の制作コストなんて半分は印刷と流通にかかってるんだから、そこがとっぱらいになるネットなら、雑誌よりもさらに小さなマーケットをねらえるだろうって。

つまり、もともとユーザのニーズは無数の個としてあるんだけど、それを満たそうとするサプライヤーのほうがそういう各個を撃破する体力を持てないもんだから、いわば暫定的に、不承不承、サプライヤーの力に見合ったニーズの集約が行われていただけなんだ、なんてね。どんな要因にせよ、サプライヤーの活動能力が上がれば、上がったぶんだけ、そのもともとっていう無数のユーザニーズに対するカバレッジも上がっていくっていうのがトレンドだという。

検索エンジンの出始めでも、SNS の出始めでも、たいがい誰かが、これからは専門化、細分化に向かうとか言い出しますよね。

でも、そういう細分化に応じて、専門サイトが増えるかっていうと、そうはいかないですよね。

ロングテールとかって、長いテールを総ざらいにできるから意味のあるボリュームを出せるって話ですよね。だから、ロングテールねらいでいけるのって、たとえば Amazon とか、そういう、いわばメガサイトだけでしょう。メガな集客があって、はじめてテールがロングになるわけで。おいしいのはしっぽが長いことを認識できる立場で、しっぽそのものを構成するメンバーではないんですよね。

たしかに、全体として千差万別の細分化されたユーザニーズに向かっていくようにみえるんだけど、それに向かっていってるのは、向かっていけるだけの力がありあまってる、つまり俯瞰でしっぽの長さを認識できるメガサイトだけではないのかっていう。

だから、検索エンジンにしても、SNS にしても、メガなところが、ロングテールの長さをどんどんに伸ばすことによって、ますますメガになっていくのがトレンド、っていったほうが当たってんじゃないでしょうか。専門検索エンジンとか、専門 SNS なんて、結局出てこないですもんね。

そのへんをわきまえてみると、雑誌のように、一応それ自体で採算がとれることをねらうニッチなメディアをネットで実現できるかって、実はネットでのほうが、ますます難しいんじゃないかと思いますね。

だって、まず、そういう規模では、雑誌制作における資本投下と労働集約よりも、インターネットのコモンでソーシャルな情報共有のほうが質としても勝っちゃう可能性が高くなるでしょう。

それから、情報発信のためのコストが下がるってことは、情報発信源の稀少性が落ちるってことでもあって、インターネットによって現れたテールの上では、そもそも、その存在すら見つけてもらえない可能性があります。

そんなわけで、信じられないようなニッチな雑誌がいっぱいあったってことに勇気をえて、さらにインターネットなんだからもっとニッチにっていう考えは、少なくとも雑誌のようなビジネスモデルとしてはありえないような気がします。そこらへんは、コモンとソーシャルに真っ先にとってかわられる部分じゃなんじゃないのかなって思います。


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