2008年12月18日木曜日

喜びの声の機能

本とかソフトウェアとか、あるいは、テレビの夜中の通販で取り扱っているものとか、自分のものにするまで、よくわからないことが多いものを買うときは、すでに自分のものにした人たちの意見を聞きたくなりますよね。

Amazonの評価とかね、もともとは立ち読みできないことを補うって発想だったのかも知れないけど、ぼんやりした自分の頭だけで立ち読みして判断するより、なんていうか、よっぽど、機能的ですよね。

購入を検討している人にとっての評判の確認って、ふたつ効果があるんだと思います。

第一に、こんなの買っちゃって自分だけが馬鹿を見るんじゃないかっていう不安や迷いの解消ですよね。それがそもそもの目的だし、本人も自覚していることですね。

あと、もうひとつ、そうやって先行する人たちの自慢を見せつけられているうちに、つい羨ましくなっちゃって勢いづいちゃう、という面もあると思うんですよね。

バイラルとかクチコミとかって、存在そのものを知らしめる手段としてターゲティングやコストの面で効果的ってだけじゃなくて、リーチのプロセスそのものが、そうやって購入動機の形成や購入の決心に良い影響を与えるからいいんですよね。

じゃあ、あれはどうでしょう?通販サイトとかで、ユーザーの皆様から喜びの声が続々 ... とかってやるやつ。

今、まじめに考えて、Amazonの評価とか他のブログや掲示板に書き込まれたレビューと、売り込もうとしている張本人が仕込んだに違いない、宣伝媒体に掲載されているユーザーの声を、同じものとしては受け取れないですよね。

いや、でも、それは、Webがあってこその比較なのかも知れないですけどね。

ブログやらSNSやら、もう全体として「評判データーベース」と呼んでもそんなに的外れじゃないような代物が目の前にあって、いうなれば、一億総レビュアー時代、今こうしている間にもきっとどこかで誰かが何かをレビューしているのです、ほら、あなたの隣にもって具合ですから。

つまり、売り手でもすでに買い手でもない"第三者"に、これだけアクセスしやすい状況は、Web以前になかったわけでしょう。

でも、購入前の評判の確認をめぐる動機や効果はWebとは関係なく昔からあって。すると、パンフレットやテレビ番組で、そこんところに刺さる情報をを提供しようとすれば、おのずと、おなじみの、ユーザーの皆様から喜びの声が続々 ... というかたちにならざるをえない。

話はそれますけど、こういうふうに、コンピューターやネットワークが発達してみて、これまでの実現形態やデザインが実は次善の策だったり挫折形態だったことが判るってことは結構あるような気がしますね。たとえば辞書とかね。あれは明らかに紙媒体には向かないコンテンツでしょう。
長い年月の間、辞書が分厚い冊子としてあったのは、それがベストだったからではなくて、それ以外にやりようがなかったからですよね。

それはともかく。

で、その喜びの声ですけども、でもね、テレビの通販番組なんか見てると、上に挙げた評判の確認の効果とは別の意味で有意義に活用されているな、とも思うんですよね。

セールストークの基本は、セールスポイントを繰り返し説いて、強調して、ユーザをその気にさせることですよね。しかし、売り子の目線と言葉で繰り返してると、ほんとに同じことに繰り返しになって飽きられちゃう。そのとき、有効なのが、喜びの声ですよね。

代わる代わる違う人が出てきて、結局はいくつかのセールスポイントに収斂していく話をするわけです。
これで、言葉は悪いかも知れないですけど、飽きさせずに同じことを刷り込んだり、植え付けたりできるようになる。

仕込まれた喜びの声だから話半分で聞くわけですけれども、ここには、スリーパー効果ってのがあるそうです。あまり信頼できない人から真偽のほどが定かではないことを聞くと、その場では胡散臭く思う。
でも、時間がたつと、話の内容と話した人から受けた印象は記憶の中でだんだん切り離されていくんだそうです。で、結果として、話の内容にまとわりついていた胡散臭さはとれちゃって、セールスポイントだけがフラットに残る。

そのへん、ちゃんと狙って作ってるのかなあ、とも思うんですよね。
そんなわけで、外部により信頼のおける第三者の声があふれかえっている世界においても、売り手の宣伝媒体における喜びの声にまったく意味がなくなったわけではないと思います。

だから、たとえば、ぼくらが何かのプロモーションサイトなんかを作っていく上では、喜びの声は、そうした、セールストークをリフレインするための手法として考えていくのがいいんだと思います。

間違っても、かつて喜びの声にも期待されていた、購入の一歩手前にいる人の背中を押すという役割を担わせようなんて思ってはなりません。

そっちは、正々堂々、外部のブログとか評価サイトとかにまかせる、というか、購入を検討してくれた人はたぶん自分で探しにいくんだろうから、サービスとしてそういう外部リソースのアグリゲーションくらいやってあげてもいいんじゃないでしょうか。仮にマイナスの評価が含まれてしまうとしても、あえて大目にみて太っ腹にね、公正に。

きっとそのほうがユーザーの皆さんとはやく仲良くなれますよ。

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