結局ユーザーに届くものってのは、アイディアでもコンセプトでもなくてプロダクト、ユーザーにとっては UI こそすべてってわけですから。
でも、じゃあ、とりあえずざっくりワイヤーフレームでも書いて、あとは見た目重要なんていっていっきに制作、開発ができるのかっていうと、そうじゃないですね。
ユーザーにとって UI こそすべて、っていう言い方はたぶん正確ではなくて、UI をつうじて心の中に出来上がるサービス/システムのイメージこそすべて、と言うべきでしょう。それをユーザーが抱くモデルって意味でサービス/システムのユーザーモデルなんていったりしますね。
そうすると、提供側の下心のほうのすべては、自分たちのアイディアやコンセプトにしたがって、ユーザーモデルをうまく誘導したり、コントロールしたりすることにあるといっていいでしょう。
それで、そういう、人の心を誘導したりコントロールしようなんていう大それた不逞を働くには、それにふさわしい準備、デザインが必要です。インタビュー、調査、データ分析なんかの上に、ありったけの想像力なんかも駆使して、とにかく、想定ユーザーモデルとでも呼ぶべきものを描いてみないことにははじまりません。
モックアップやプロトタイプ、それからワイヤーフレームは、そういうユーザーモデルデザインの検証には役立ちます。デザインされたユーザモデルをユーザーの心の内に作り上げることができるかどうかということと、ユーザーモデルデザインそのものに不足や偏りはなかったかという二面で。
でも、それらで、直接ユーザーモデルをスケッチすることはできないわけです。
ときに、なんだこりゃ、と思わずにいられないワイヤーフレーム、モックアップ、プロトタイプに出くわすんですが、そういう場合は必ずといっていいほど、ユーザーモデルデザインのプロセスがないがしろにされていますね。
ぼくは、システム設計、特に MVC のモデル層の設計の根拠としてだけでなく、ユーザーモデルのスケッチとして、概念モデル図はつねに書かれるべきだと思います。あるいは、マインドマップでもいいんですけど。
そして、要件定義、設計、実装の各段階、ギャレットの五段階でいえば、戦略、要件、構造、骨格、表層の各段階において、そういうユーザーモデルのスケッチが毎度参照され、点検されるべきだと思いますね。
オライリーから出ている「デザイニングインターフェース」という本は、いってみれば、UI デザインのカタログですけれども、その一部に、ユーザーマインドの類型化を試みている箇所があって、これは非常に参考になります。そういうかんじで、UI のむこうにあるユーザーモデルをモデリングする技術とか、ユーザーモデルをデザインする上でのデザインパターンだとか、そういう方向にこそ、Web ディレクターとしての技術のコアがあるような気がするんですよね。
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